レポート イベント、アートフェス、見本市、新店舗など、編集部目線でレポート

LA アートイベント「Pacific Standard Time 1945~1980」

LA アートイベント「Pacific Standard Time 1945~1980」

アート&デザインをテーマに、さらなる観光振興を目指すロサンゼルス

2012/04/11

レポーター:浜田拓郎

米国西海岸最大の都市で知られるロサンゼルス(Los Angeles)。ハリウッド映画に代表される映画産業やディズニーランドをはじめとするテーマパークの街として、国際観光都市として親しまれてきた。しかし、映画やテーマパークだけでの観光都市は今後は成立しないとの観点から、次世代に向けた、新たな観光誘致政策がスタートしている。その回答例のひとつが、“アート&デザイン都市・ロサンゼルス”の展開だ。

ロサンゼルスのアートイベント「パシフィックスタンダードタイム1945~1980」

ロサンゼルス観光局が進める“文化観光=カルチャーツーリズム”において、その目玉となるのが「パシフィックスタンダードタイム:アートインLA 1945~1980」(以下PST)であり、2011年10月から2012年4月末まで開催中だ(テーマごとに開催期間は異なる)。

市内はじめ隣接地域一帯に点在する約60の美術館や文化施設などで、様々な催しが行われている。ロサンゼルで発達した多様なアートシーンがいかにして興り、世界の芸術に影響を与えてきたかを示す企画内容だ。
このかつてない規模で開催されているPSTを主導したのが、地域文化の発信地のひとつであるゲッティ財団(ゲッティ・センター内)だ。10,000ドルを拠出して、地域にある文化・芸術を掘り起こし、広く伝える意義を展開しようというものだ。域内に点在する60余りの美術館や文化施設などが、一斉に同一テーマで参加・展示する、共同企画展だ。

アメリカのアートシーンといえば、NYをはじめとする東海岸で活動していたアーティストのスタイルがあるが、PSTではヨーロッパの流れを汲む東海岸の格式や枠にとらわれない、1945年から1980年代にかけて制作や発表された作品を展示。
世界経済や政治をリードしながらもベトナム戦争や人種差別問題など、様々な社会問題も抱えていた当時のアメリカを表現している。

ここでは、域内で中心的な存在となる3カ所の施設を紹介する。

グラフィック
PST開催を告知するパネルは共通のグラフィック
エンカウンターレストラン
ロサンゼルスの玄関となる、ロサンゼルス空港にあるエンカウンターレストラン。30年以上前にディズニーのデザイナーが手掛けた、宇宙ステーションをイメージしたユニークな建物

ロサンゼルス群立美術館 Los Angeles County Museum of Art

表記の頭文字である“LACMA”で知られるのが、1965年に開設されたロサンゼルス郡立美術館。多民族の人が生活するロサンゼルスの特徴や歴史を表す作品を展示する。域内では最大規模の総合美術館。常設展示の中には、日本の美術品を収蔵展示するとともに、ロサンゼルスの地域性を反映した、絵画、写真、彫刻など、多彩な作品を展示。
PSTでは“カリフォルニア・デザイン1945~1980”(Living in a Modern Way)の展示ブースでは、わが国のライフスタイル発展にも影響を与えた、ファッションから家具から建築、グラフィックデザイン、自動車などの各分野のデザイン作品からなる、350点の作品が紹介された。

ロサンゼルス群立美術館
  • ロサンゼルス群立美術館
  • ロサンゼルス群立美術館
  • ロサンゼルス群立美術館

ゲッティ・センター The Getty Centert

ロサンゼルス市街地を望むハリウッド丘陵地の一角にゲッティ・センターの白亜の施設が建つ。かつての石油王だったポール・ゲッティ氏が生前中に収集した中世時代からの美術品を展示するために、没後設立されたゲッティ財団によって1997年自宅近くの丘陵地に建てた博物館。

PSTの展示ブースをはじめ、広大な敷地に点在する独立建屋に、数多くの高額美術品が展示されている。それだけに警備員の数も多く目立つのも特徴。好天時には太平洋や市街地の高層ビル群などの眺望もあり、テラスでの食事も楽しむことができる。

ロサンゼルス群立美術館
  • 常設館
    ゲッティ財団による所蔵作品の常設館は、テーマや作者ごとに建屋が独立して展示されている。
  • 丘陵地に建つセンター
    丘陵地に建つセンターからは、ダウンタウンの高層ビル群や太平洋などが眺望できる。
  • 展示建屋のある丘陵地
    展示建屋のある丘陵地は、車の出入りが禁じられているため、ふもとからケーブルカーで登る。

全米日系人博物館 Japanese American National Museum

市内中心部の一角にかつて多くの日系人で賑わった、リトルトーキョーが存在する。それに隣接して立つのが全米日系人博物館で、米国と日本の交流の永い歴史を伝えるべく、第二次大戦の日系退役軍人や在米日本人ビジネスマンなどの尽力により、1992年に開館。戦前から現地に移住した日系人の、苦労の歴史と足跡が紹介されている。
PSTでは、地元のデザインカレッジを卒業してカーデザイナーになった日系二世(ラリー・シノダ氏)の作品、世界最大の自動車メーカーGM(ゼネラルモーターズ)のスポーツカー“シボレー・スティングレイ”を展示。流麗感溢れるスタイリングからは、日系人の汗と努力が伝わってくる。

全米日系人博物館
  • 施設の模型
    再現された、第二次大戦中日系人が収容された施設の模型。
  • 記録
    多くの日系人が苦労の日々を送った記録が紹介されている。
  • スポーツカー
    日系人のラリー・シノダ氏がデザインしたスポーツカー。

【取材協力】
ロサンゼルス観光局、デルタ航空、フィアット・グループ・オートモビルズ・ジャパン
Pacific Standard Time:http://www.pacificstandardtime.org/

Profile

浜田拓郎

浜田拓郎/デザイン・ジャーナリスト

東京経済大学経済学部卒業/広告会社(株)南北社勤務(企画部門)後、現在の旅行、ホテル(建築)、交通ジャーナリストならびに、デザイン・ジャーナリストとして活動。フリーランスを開始以来、永らく自動車ジャーナリストとして、自動車専門誌等に寄稿。その後現在の国内外の旅行動向や建築やホテル分野。さらに交通分野(鉄道、エアライン、クルーズなど)のジャーナリストとして活動中。