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エントランスホール「Oh Sunny Day!」

Stockholm Furniture Fair 2013

北欧デザインが一堂に集まる「ストックホルム国際家具見本市」をレポート

2013/04/10

レポーター:服部 暁文

毎年2月の上旬、スウェーデンのストックホルムではヨーロッパ最大級の家具見本市が開催され、北欧各国から家具やテキスタイルが集まります。今年は2月5日から9日まで開催され、750の出展者が集合。トレンドやブランドイメージを伝える企業の出展ゾーンと、若手デザイナーや学校からの出品が集まる「グリーン・ハウス」が、会場を華やかに彩ります。

今年のゲストデザイナーは nendo

メイン会場のエントランスホールにはゲストデザイナー「Guest of Honor」である、日本のデザインスタジオnendoが手掛けた真っ白な作品が展示されていました。テーマは「小さな!(驚き)の提供」。波打つような構造体は、よく見ると5mm厚のスチレンボード。白色の鋭いライティングと相まって、今まで気がつかなかったスチレンボードのやわらかい素材感が主張されていました。

企業にとってはブランドアピールの大切な見本市、ブースデザインにも力が入ります。その中でも一際目を引いたのは、デザインデュオRaw Edgeが手掛けたデンマークのテキスタイルメーカーKvadrat。ストライプ状のテキスタイルを大量に吊り下げ、まるで大きな柳の木のような柔らかな存在感を出していました。専用にデザインされたテーブルに座ると、森の中で好きな素材を選んでいるような気分にさせてくれます。

北欧では、家具と合わせて置かれるファブリックやステーショナリーも、インテリアの雰囲気を決める大切な要素になります。今年は、パステルカラーを基調としたほのかな色合いがトレンド。すっきりとした家具のフォルムに、日本にも馴染みのある身近な色たちが組み合わさると、日常的な雰囲気ながらも、今まで見た事のなかった新鮮な表情を見せてくれました。

Guest of Honorとして招待されたnendoのインスタレーション
Guest of Honorとして招待されたnendoのインスタレーション
デンマークのテキスタイルメーカーKvadratのブース
デンマークのテキスタイルメーカーKvadratのブース

同じく新鮮な空間体験を提供してくれたのは、イラストレーターのKustaa Saksiと建築家Gert Wingardhの共同作である「Hello!」というイベントブースです。外からは霧のかかった空気の固まりのように見えますが、大量に吊り下げられた紙にはカラフルなイラストがプリントされています。中に入るにつれてイラストが鮮やかに広がっていく感覚は、まるで教会のステンドグラスを前にしたときのような体験でした。

イベントブース「Hello!」。イラストがプリントされた紙が大量に吊り下げられている
イベントブース「Hello!」。イラストがプリントされた紙が大量に吊り下げられている
企業出展ゾーンの様子
企業出展ゾーンの様子

若手デザイナーの登竜門「グリーン・ハウス」

若手デザイナーの登竜門としての役割りも担う「グリーン・ハウス」には、多くの個性が発揮されています。今年のゲストデザイナーである、佐藤オオキ率いるnendoも2002年に初出展。この場所で才能を見出され、現在では世界的なデザイナーとして活躍しています。

北欧の伝統的な木工技術をモチーフにした作品が多く、難易度の高い技術を再現したり、伝統を基にした新しいフォルムを提案したりと、挑戦的な表現も見られます。一方で、社会性を意識した作品も多く、木材加工の段階で生じる廃材をデザインに利用した家具や、使っている中で素材の再利用について学ぶことができるプロダクトなど、生産プロセスや教育にまで考えを廻らせた、深い視座をもったデザインも見ることができました。

若手デザイナーや学校からの出品が集まる「グリーン・ハウス」のエリア
若手デザイナーや学校からの出品が集まる「グリーン・ハウス」のエリア
素材の再利用について考えるプロセスをデザイン
素材の再利用について考えるプロセスをデザイン
伝統に新しいフォルムを提案する作品が多くみられる
伝統に新しいフォルムを提案する作品が多くみられる

会場全体を通して印象的だったのは、目新しい表現の中にも、良いモノをデザインしようという意識が浸透していること。それぞれの作品に込められた想いは様々ですが、使い手・社会・伝統との対話の中でデザインすることが、良いデザインに繋がるという理念が、貫かれているのを感じることができました。

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Profile

服部暁文

服部暁文

1983年生まれ。一級建築士。東京工業大学大学院建築学専攻(塚本由晴研究室)修了。2008年東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)入社。駅/エキナカの開発・維持運営に携わる。現在、ストックホルム王立工科大学に在籍。2013年夏からアアルト大学に在籍予定。地域と連携する駅のデザインが研究テーマ。2011年より、いい駅を創るための研究会「エキラボ」(www.eki-labo.org)を主宰。